スピリチュアル心理療法について

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スピリチュアル心理療法について

 

水子の霊?それとも解離性障害?

 数年ほど前に、長引いているうつ病の女性が相談にこられました。身体の力を充分に抜いてもらい、心地よいイメージを思い浮かべてもらう練習をしていました。すると突然普通の会話の声とは異なる、低いうめくような声で「悔しい」と言いはじめました。
 私はびっくりして、彼女に何が起こっているのか尋ねました。次のような答えが返ってきました。
「僕は、この人の母親がおろした水子だ。生まれたかったのに妨害されて悔しい。母親はもうこの世にいないので、その娘であるこの人に取りついて苦しめてやっているのだ。」
 しばらく経つと、彼女は元の状態に戻り、「水子の霊」が何を語っていたのか覚えていないようでした。
 心理学や精神医学の分野では、このような状態は、解離性障害と呼ばれています。一見霊が取りついているように見える場合は、解離性同一性障害(昔の呼称は多重人格障害)と言われます。・・・と割り切りたいところなのですが、それにしては不思議な点がありました。

 

心理療法とスピリチュアルな対応

 その頃、別の解離性同一性障害のかたの心理療法に苦労し、専門書や論文を多く読んでいました。それらによると、解離性同一性障害は交代人格(別の人格)が一人だけの二重人格という例はまれで、たいていは数個から数十個の交代人格が出現します。
 しかし、この女性の場合、ずっと「水子の人格」しか出てきませんでした。そして、この「水子」になぜ、今までこの女性が通っていた数人の精神科医やカウンセラーの前では出てこずに、私の前でだけ出てきたのか聞いてみました。
「あんたは、他の者と違って、霊の存在をちゃんと認めてくれると思ったからだ。」と答えました。
 この女性に、解離性障害の研究と治療の第一人者である、フランク・バットナム博士の作った「解離体験尺度テスト」をやってもらうと低得点でした。
 これらの点から、この女性の「水子」を解離性同一性障害の交代人格として扱うよりも憑依している霊として扱うことにしました。

スピリチュアリズムを参考にして

 特定の宗教的立場には立たないけれど、身体を離れた霊魂の存在を認め、研究する分野をスピリチュアリズム(心霊主義、神霊主義)といいます。
 スピリチュアリズムを標榜している人たち(スピリチュアリスト〜最近TVや雑誌によく出ている江原啓之さんもスピリチュアリストの一人です。)にも考え方の違いによって、いろいろなグループがあるようです。
 私は憑依している霊にどう対応すべきか、何人かのスピリチュアリストが書いている本を比較検討して、「霊に教え諭す」という方法が最も納得できました。それで水子霊にも「憑依したままだと、あなた自身のためでも良くないよ」と繰り返し伝えました。長い期間かかりましたが、最後には納得して彼女から離れてくれました。
 それにつれて、彼女のうつ状態も改善していきました。

スピリチュアル心理療法とは

 このような不思議な体験は、それ以降はありません。しかし、宗教やスピリチュアリズム的人生観を持っている人には「霊魂は不滅である」という前提でカウンセリングをしています。(唯物論的人生観を持っている人とのカウンセリングでは、魂や霊などについては一切触れません。)
 また、霊魂の輪廻転生を前提として、催眠状態において、前世の体験を想起してもらい、現在の人生や問題とのかかわりを探求する「前世療法」も希望されれば行っています。このように霊魂の存在を認めて行う心理的援助全般を、個人的にはスピリチュアル心理療法と呼ぶようにしています。
 こんな柔軟な立場をとれるのは、在野のカウンセラーならでは、と思っていたら、大学で教鞭をとる心理学者のなかにも志を同じくする人たちがいるのを最近知りました。その人たちが書かれた本を紹介しておきます。

  三沢 直子(明治大学教授)著/コスモス・ライブラリー刊 2006年
   「”則天去私”という生き方ー心理学からスピリチュアリズムへ」
  石川 勇一(相模女子大学助教授)著/メディアアート出版刊 2005年
   「スピリチュアル臨床心理学」

 一方、「スピリチュアル臨床心理学」で筆者の石川勇一氏も語っています。「偽りの霊性や神話を信じることよりも、合理的な知性による無神論のほうが、実はよりスピリチュアルであることを理解しましょう。」
 過度に唯心論的なスピリチュアリズムは、気をつけないとやみくもな神秘主義に入り込んだり、一方的な御託宣や決めつけがあたり前のように入り込んでしまうこともあります。これは、心理療法として必要な関係の対等性、内容の開明性、こられる方の主体性を損なうことにもなりますので、私たちは決して行わないやり方です。
 いつも心の内面と現実のバランスをもったやり方を大切にするように心がけています。 

 

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