| 認知行動療法の研究者達は、前述のように、効果判定の研究を重視します。マインドフルネス瞑想が、不安、うつ、あがり、緊張の改善に有効であることを実証し、なぜ有効なのかを探求した研究は、徐々に増えてきています。
先に述べたベンソン達の瞑想の効果についての初期の研究では、集中に焦点を当てたタイプの瞑想法を扱っています。そのような瞑想法では、1つの対象に注意深く集中し続けることに習熟すれば、深いリラクセーションが得られ、不安、うつ、あがり、緊張が軽減することがわかりました。
他方、マインドフルネス瞑想は、集中→リラクセーション型瞑想ではなく、洞察型瞑想です。すなわち体験されるあらゆることに注意を向けつつも、いっさいの解釈や判断をしないで、注意深く探ってみるという瞑想法です。
このタイプの瞑想法についての研究によれば、「脱中心化」(脱同一化ともよばれます)という態度が身に付くことが、不安、うつ、あがり、緊張軽減に役立っていることがわかりました。「脱中心化」とは、不安、うつ、あがり、緊張というネガティブな感情が、現実の事態を適切に反映したものではなく、また自己の中心的側面でもないと気づくことです。いわば不安、うつ、あがり、緊張に飲み込まれずに、距離をとれるようになるということです。
従来の認知行動療法では、不安、うつ、あがり、緊張が生じてきている時の思考の内容を吟味し、それを適切に修正することで、不安、うつ、あがり、緊張を軽くしようとします。確かにこれが功を奏することがあります。しかし、認知行動療法の実施中に思考の内容があまり変化していないにもかかわらず、効果があがる場合があることがわかってきました。そのような場合には思考の吟味の過程で「脱中心化」が不安、うつ、あがり、緊張を軽減しているのではないかと推察されました。
そこで「脱中心化」という態度を身につける技法として、マインドフルネス瞑想が注目されるようになったのです。上座部仏教の瞑想法を指導する僧侶達は「『悩む人』から『悩みを観察する人』になりなさい」と教えるそうですが、これは「脱中心化」のことを言っていると考えられます。
「脱中心化」によって不安、うつ、あがり、緊張と距離をとれるようになると、不安、うつ、あがり、緊張をどのように体験しているかという「体験様式」が変化していることになります。「体験様式」の変化の重要性については、以前から臨床動作法が効果をあげる原理について研究していた日本の臨床心理学者達によって指摘されてきました。
マインドフルネス瞑想の習熟により「体験様式」が変化すると、不安、うつ、あがり、緊張だけでなく、手のふるえ、吃音の改善にも効果があることが、来所してくださっている皆さんとの取り組みでわかってきています。
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